中小企業金融円滑化法(3) - コンサルティング機能と出口戦略
2013/02/11|ビジネスコラム
金融機関の出口戦略としての中小企業の経営改善支援の例
私どもでは、中小企業金融円滑化法の終了に向けての金融機関の出口戦略のお手伝いとして、昨年の7月からは、金融機関と協力しながら集中的に約40社の中小企業の経営改善支援をお手伝いさせていただいております。
この金融機関は地域に根付いた金融機関のため、地元中小企業の経営改善を通じた地域の活性化は正に経営理念で掲げている存在意義そのものに直結すると言っても過言ではありません。
したがって、この金融機関ではコンサルティング機能を高め取引先の中小企業の資金支援のみならず経営改善を積極的かつ継続的に支援すること、そしてその能力を職員が身につけることが大きな課題となっています。
そのような中で、その金融機関で行ったスキームは、以下のようなものです。
① まずは、支店長に対する集合研修を実施し、中小企業に対するコンサルティングのポイントについて、経験豊富なコンサルタントから体系的に学んだ。
② その後、支店長とコンサルタントがチームになり、実際の取引企業へ同行訪問し、経営改善のための働きかけ(意識付け、課題の明確化、アクションプランの確認など)を行っている。
※支援企業は、あらかじめ決められた基準に基づいて各支店長が1~4社選定。
③ その後の取引企業へのフォローアップは、支店長が単独で行い、アクションプランの進捗管理や意識付けの再確認、相談等を行っている。
※①②の活動を繰り返す。(①は原則として3回)
④ そして、支店長が実際の現場(取引企業)におけるOJTを通じて、実践的にコンサルティング手法を学んでいる。
⑤ また、3ヵ月ごとに各支店長が本部に集合して、自店の取引企業に対する支援の結果や進捗状況を発表(プレゼンテーション)し、実例を元に情報の共有化を行い、さらなる知識およびコンサルティング手法・スキルを学んでいる。
⑥ 最終的には、支店長から次長、そして一般職員へと店内の勉強会やOJTを通じて、担当者レベルのコンサルティング能力の強化を図り、組織全体としてのレベルアップを目指している。
[成功事例] 頑張る企業は、あっという間に経営改善する
上記の金融機関の支店長との同行訪問による中小企業支援において、多くの企業において実際に成果(成功事例)が出ています。おそらく半分以上の企業において、何らかのプラス効果が出ています。
[事例1]1ヵ月で、大幅な赤字から脱却した企業
(効果)
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[事例2]支店長自らコスト削減の支援
(効果)
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これらの企業は、おそらく放置しておけば、経営は悪化した可能性が高い企業ばかりだと思いますが、支店長や我々の熱意が、経営者の心を強く動かし、結果として行動を促しこのような結果をもたらしているものと考えます。
これ以外にも、スピードの違いこそあれ、多くの取引企業が、コンサルティング等の支援前と比較して、経営改善の方向に動いていることは間違いありません。
結果が、決算書や試算表等の数字として表れた時は、本当にうれしく思います。
この地域金融機関では、中小企業金融円滑化法やその終了に向けた出口戦略の趣旨を踏まえ、まじめに、地道に顧客である 中小企業の支援活動(コンサルティング機能の発揮)を行っています。だからこそ、小さいながらも確実に成果(成功事例)が出始めています。
単独では経営改善が難しいのが中小企業の特徴でもあります。やはり、地域のパートナーとして金融機関のこのような働きかけは重要だと確信します。
コンサルティングで一番大切なことは、相手に本気になっていただくこと
これまで多くの中小企業の経営改善等のお手伝いをさせていただき、中小企業の経営を良くするポイントは経営者の心を動かすことです。
いかに“本気”になっていただくかが最重要です。
我々コンサルタントは、それを実現する状況把握力やコミュニケーション能力をさらに身につけることが重要だとつくづく思います。