中小企業の業績悪化のパターンと企業再生⑥ - 販売費および一般管理費の削減(1)
2013/02/11|ビジネスコラム
販売費および一般管理費の削減(1)
販売費および一般管理費の削減で、まず注目するのは人件費です。
人件費は、役員報酬、給与、法定福利費などです。
小売業やサービス業など(製造原価等で人件費を計上していない業種)の場合、一般的には販売費および一般管理費の中で最も大きな割合を占めます。
人件費は、固定的な部分と変動的な部分がありますが、固定的なものは、役員報酬、従業員の基本給や役職手当、家族手当など、および社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料)などの法定福利費です。
変動的なものは、時間外勤務手当(残業手当)、休日勤務手当、労働保険料(雇用保険料、労災保険料など)、アルバイトや臨時雇いなど非正規型従業員の人件費などです。
まず、はじめに検討するべきは、時間外勤務手当など変動的な部分を削減することができないかです。
実際に、企業様で支援させていただく場で良くあるケースは、売上高が下がっているにもかかわらず、時間外勤務手当(残業手当)が下がっていないケースです。
製造業の場合、生産量が落ちている。運送業の場合、輸送量が落ちている。
サービス業や飲食業の場合、来店客数が減少している。
にもかかわらず、時間外勤務手当(残業手当)はほとんど変化していないと言うケースです。
売上高に応じて変動する変動費ですから、ほっといても下がるというのが常識的な考え方ですが、常識が常識どおりにいかないのが、恒常的に赤字に陥っている企業ではよくあることなのです。
なぜ、こういう現象が起きるかというと、従業員の意識と管理の問題が絡み合って発生していることが多いのです。
従業員は会社から支払われる給与をもとに生活をしており、そこから生活費や教育費、住宅ローンの返済をしていますので、基本的にはある程度の給与を欲しいと考えるのが、一般的です。
(勿論、中には給与は低くて良いので、早く帰りたいという方もいますが。)
したがって、ある程度の残業をして、時間外勤務手当(残業手当)をもらいたいと考えるのが普通です。
そうすると、従業員は生産性を落として、仕事をしている時間を維持しようとします。
(※前向きにお仕事をなさっている方も、勿論いますが)
一方、このような労働時間や生産性の管理をするのが、管理職(マネージャー)や経営者の仕事ですが、全く管理が不在になっている企業や現場も多いのです。
この場合の管理とは、
- 仕事が終わっている従業員がいれば、残業をしないで早く帰るように指示する
- 生産量や仕事量や来店客数が少ないと見込めれば、パートさんやアルバイトさんの人員数や、ローテーションを変える
- 生産性が悪い従業員への指導を行い、生産性を高める工夫をする
などです。
いずれにしても、売上高や生産の状況や、現場の実態をよく把握していないと管理することができません。
また、従業員に言うべきことはきちっと言うということが大切です。
次に、役員報酬、従業員の基本給や役職手当、家族手当などの固定的な部分ですが、減額する場合は、まずは役員報酬から減額するのが一般的です。
赤字に対する経営責任をとってということになります。
金融機関や従業員に対する説明もしやすくなります。
但し、決算年度中の役員報酬の変更については、著しい売上の著しい減少等がある場合を除き、原則認められておりませんので注意が必要です。
また、金融機関は、中小企業の場合、会社と経営者個人を一体的(連結的)にみて、採算性の実態把握を行いますので、あまり極端に役員報酬を引き下げて(例えば、年収120万円など)、黒字をだしたとしても、評価が格段に高まるかといえば、必ずしもそうはいきません。
それから、従業員の基本給や役職手当、家族手当などを削減する場合は、従業員の労働条件の不利益的な変更になりますので、簡単に実施するというわけにはいきません。
詳細は後述したいと思いますが、従業員の同意や一定の手続が必要になります。